1 タウ・ブッチーニは星のカードを引いた

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「このカードはお兄さんよ。絵柄は愚者。カードの意味は『期待』とか、『喜び』とかの明るいものだけど、今回は上下が逆の逆位置で出てしまったわ。したがって、エリスとの将来は、明るいものではないと思う。もしかしたら……辛い別れとか、あるかもしれない。それでも愚者は本来明るいカードだから、お兄さんは深い心の傷を負っても、立ち直ることができるでしょうけど」  マリーベルの宣託は、あくまでも淡々としたものだった。しかし、どうにも抗いがたい力がある。辛い別れと聞かされて、タウ・ブッチーニは、フットボール選手さながらの広い肩をがっくりと落とした。 「兄貴、残念だったな。マリーの占いは、母猫譲りで当たるぜ。まあ、エリスのことは諦めるんだな。しかし、これから先も明るいことはあるって言うし、希望を持ちなよ」  兄猫の頑丈な背中を叩き、弟猫が笑った。しかし落胆の色濃いタウの目の前に、新たなカードが差し出された。そこには暗い夜空に、大きく輝く星が描かれていた。 「見た通り、これは星のカード。これが正しい位置でお兄さんの傍に出ているの。これが何を意味するのかはわからない。でも、終生この星は、お兄さんの傍にいるわ。きっとお兄さんの一番大切なものになるはずよ」
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