空っぽ

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 ネットで購入したGPS発信機を机の裏側に取り付けておいた。運ぶ時に見つけられないよう、カモフラージュも施してある。  枕元に置いてあった携帯電話を引き寄せ、GPS発信機と連携したアプリを開いた。使い方はテスト済みだ。携帯電話を操作し、発信機の場所を画面のマップ上に表示した。 「……?」  発信機の場所を示す赤い点滅がある場所は、彼女の家の近くだった。  彼女は実家暮らしだ。GPSを頼りに辿り着いた建物は、どうやら彼女の父親の仕事場のようだった。どうやらと述べたのは、作業服を着た彼女の父親の姿を確認したことと、建物に掛けられた看板の名前が彼女の名字と同じ物だったことによる推測からだ。 『○○引っ越しセンター』  俺の冷蔵庫と思われる物をトラックから建物へと運び込むのは、作業服を着た二人の若い男。他にも段ボール等を運ぶ、やはり若い男の姿がちらほら。彼らに向けて、彼女の父親は叫んだ。 「うちの後継者選抜会も今回で五回目だ。定期的に実習試験の場を設けてくれる娘の為にも、そろそろ後継者と娘の婿に相応しい男を決めようと思う。心して作業してくれ」  父親の言葉に作業服の男たちは次々に返事をする。身が引き締まったらしい。そんな彼らを遠くから見詰める、いつもより化粧も服装も妖艶さが際立つ彼女の姿が目に入った。
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