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***
「佐藤、好き。」
ぼそりと呟いた独り言でさえこの言葉は私に酷い罪悪感を与えた。
私は佐藤みなみが好きだった。
彼女はきっと私のことを仲の良いお友達としか思ってないだろう。
彼女が女の子なら誰でもするハグとか、そういうのが私の気持ちと大きく違っている。
一目惚れだった。
その白い肌とか黒目がちな瞳とか。
ショートヘアなのに女の子らしさ全開の容姿のすべてが。
私は好きだった。
***
今まで人を好きになったことなんてなかった。…ましてや女の子なんて。
初めて気軽に求められたスキンシップを私は嫌悪感から拒絶してしまった。
「あれ?こういうの慣れてない?」
うち女子高出身だからさ。なんて笑っている佐藤の目がみれない。
先ほどの言葉が妙に熱っぽく耳に残る。
好き、なんだ。
その気持ちを改めて再確認した。
伝えられる日なんてこないけど。
***
「うちのことはミナミって呼んで良いよ!」
そんな風に言ってくれた彼女の言葉もうまく受け入れられなくって。
照れ隠しで佐藤ってよんだ。
「いいね!なんかアイドルとかでもさ、名字で呼びあう子たちもいるじゃん?」
なんてポジティブに受け入れてくれた佐藤もまた私のことを宮下と呼んだ。
よくいる女の子の距離感。
よくない佐藤への気持ち。
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