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我が家の家訓のひとつに“DIY”というものがある。「Do It Yourself自分でやる」ということだ。テレビ番組なんかでは芸能人が日曜大工に励むさまを放映しているが、私の場合、これは身の回りのものの修理が主な意味である。 私の成長とともに発展・普及してきたインターネット環境。これがDIYに拍車をかけたと言えるだろう。 或る平日の夜。仕事から帰宅した私は食事をとりながら母の話を聞いていた。正直さっさと食べ終えて自室に引きこもりたかったが、他に話し相手がいないといって機嫌を損ねられるのも本意ではない。話題は職場の愚痴に始まり、己の老化・健康、テレビでみた雑学、携帯のタイムラインに着たニュースへと流れていく。しばらくすると母は思い出したように言うのだった。「最近見たブログで○○を自分で作っているいるひとがいたの」私がDIYにとりかかるときはだいたいこの一言から始まる。 自身が通学で使っていた自転車のパンク修理、タイヤ交換、ホイール交換、ブレーキングの調整なんかは慣れたものだ。あと多かったのが水道の水漏れやトイレのタンクといった水回りのトラブル処理だ。これは作業前に元栓をしっかりと閉じておかないと泣くはめになる。カビの生えた壁に新しい壁紙を与えてやったり、フローリングにできた小さな穴ぼこに茶色い蝋を流し込んで目立たなくしたりもした。たまに外壁のひび割れにモルタルを詰めたりすることもあった。これは手や服が汚れるのであまり何度もやりたくはない。 母曰く、DIYとは“おまえ(私)がやれよ”である。 最近では職場の機器トラブルにも駆り出されるようになってきた。温度制御系からエラーメッセージがでる:循環水のラインを掃除しろ。冷却器の電源が入らない:ヒューズを確認しろ。真空ポンプが、キセノンランプが、パソコンが、蛍光灯が。業者を呼んでくれ。いちいち私をアテにするな。自分らでもやってくれ。とくに蛍光灯。
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