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時は流れてもあの日見た空は変わらない
風が吹いて私の着物を揺らす。橋の真ん中の柱に背中を預ける。雲の流れるのが速いと思って空を見上げていた。そして私の目には熱い涙が右目から一筋流れていた。
「おい、空よ、答えろよ。そこで見てたら分かるだろ?あいつは今、どこで何をしてる?そうだ、盃を交わした俺の家族殺しの同輩は……」
もちろん、空は答えることなく私の上でただひたすら雲を泳がしている。
橋の先には私の家族が何人も倒れていた。その近くにある印が私を困惑させた。それは親友であることを証として刻んだ印。その印は私の左手の甲にある横に二本の線に斜めに二本の線が重なるようにした『#』という印である。一箇所ではなく地面や壁などに散らばってその印は横たわる人数分刻まれてあった。横たわってるのは家族だけではなく、子供の頃から近所の知り合いだった店の人たちさえそうだった。辻斬りなんてこの世ではよくあることであった。前にも報告文を目にしたことはある。それでも許せないことなのに親友がやったと思うとさらに腹が立つのだ。私の心の中にはこの思いしかなかった。
ーー殺してやりたい、と。
私が涙ぐんでいると、土を踏む音が聞こえる。
「何奴だ!!」
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