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「こりゃあ、大変でしたなぁ。そなたが探している者を教えてあげますよ?」
その男は大きな体をして親切そうに笑っている。私は罠であると確信している。脇にある刀から違和感を感じるからだ。ただ私はここで立ち止まるわけにはいかない。たとえどんな罠であっても今ここで動かなければ何も始まらないと思ったからだ。
彼に導かれて町の離れの草原にやや遠くから見える一つの藁でできた家があった。そこに横たわる見知っている一人の男。その近くに一人の男が近寄る。どうやらその男は彼に殺された店の人の息子だろう。会ったことはないから何とも言えないが。まぁ、ざまあみろと言ってやりたいくらいだ。
「ちっ。まだ立つのか。あんなどこにでもいるゴミどもを庇うために一人で歯向かうなんてよ……あっ……」
目の前にいる男はそう呟いて驚いた表情をしている。
どうやら、私は思い違いをしていたようだ。彼は私の家族たちを殺したんじゃない。守ってくれたんだ。そんなことを思うと、私が心の中で告げた言葉に悔しみを覚える。何がざまあみろだ、今の俺がざまあみろだ、と。
私は速やかに刀を鞘から抜く。冷たい風が吹き上がる。
「やる気か?あいつを殺すん……」
「お前がまず死ね」
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