第1章

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目が覚めるとそこには 私が床に倒れていた。 二日酔いのせいか少し頭が痛い、それにぼんやりとしているが見慣れた自分を見間違える訳が無い。 倒れていると言うよりは床で丸くなっていた。 と、なるとソファの上から私を見ている私は何? もしかして私は死んでしまったのか? それとも幽体離脱? テーブルの上にはワインの空き瓶とビールの空き缶にグラス、食べ残したツマミが散らかっていた。 重い頭を振り少しずつ思い出してみた。 そうだ、昨夜は仕事でトラブって久しぶりの 家呑みで深酒してしまった。 私は三神禊23歳、グラフィックの専門学校を卒業して東京のデザイン事務所に就職。 ようやく一つのクライアントを任して貰えるようになっていたのだが、慣れのせいか イージーミスを犯してしまった。 印刷が終わり納品後にクライアントからクレームが入った。 いつもなら何度もチェックをしていたのに誤植があったのだ。 しかも商品の金額を一桁間違えるという 最悪の間違いで久しぶりに思い切り落ち込んだ。 直ぐに版下を修正して印刷会社に頼み込み最短で納品してもらうようにお願いした。 せっかくクライアントにも信用してもらい新しい仕事も依頼して貰えるようになっていたのに。自分のミスなので誰にも文句も言えず、クライアントには値引きと最短での納期で許してもらい、印刷会社には無理矢理印刷日をねじ込んで貰った。 また、会社には損害を与えてしまい社長に謝ったが、「起こった事は仕方がない、今後気を付けるように」と言われ余計に落ち込んだ。 叱られた方が少しでも気が晴れたかもしれない。 印刷会社の入稿前にもう一度確認すればと後悔したが後の祭りだった。 神さまに朝起きたら発注する前日に戻りますようにと心の中で祈った。
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