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まあそんなこんなで僕はこれまでの一ヵ月、己の作り上げた幻覚と会話を続けていたという事が分かった。
そりゃ、親切な尼崎さん以外の他の看護師さんがあまり僕に話しかけない理由も分かるというものだ。
病院に勤めている白衣の天使さん達とはいえ、見えない誰かに四六時中話し掛けているような、そんな人間にはあまり関わり合いたくはないだろう……と。
で、もうひとつオマケに、逆に尼崎看護師が僕に対してよく話し掛けてきてくれていたのは、いつも見えない誰かと話をしているような……そんな孤独な少年の精神状態を慮って、手を差し伸べようとしてくれていたのだということも理解できた。
僕はどうやら、自覚のないまま人前で奇行を繰り返していたらしい。
なるほど納得だ。さらに以前の――というか、今現在。僕には友人もなく、親にも見捨てられたような人間だったという現実が加われば、もう笑うしかない。
ってか、そんなことが分かったところで何の解決にもならなかった。ただ、現状認識ができただけじゃねーか!
「まあ、うまいこと記憶喪失になって、以前のろくでもない人生の記憶が無くなったんだから、人生リセットした気分でやっていけば?」
僕の作り上げた幻覚は、漫画を読む目も離さずに面倒くさそうにそう言った。
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