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「はっ!?」
気が付くと、僕はその車に乗っていた。
なぜなんだ!? 僕はブラジャーへの誘惑に負けたのか!?
そんな疑問を抱いている僕の横のドライバーズシートで、長髪の女性はつぶやくように言った。
「……もし相手がごねた時には、このブラを見せれば車に乗ってくれるとは聞いていたけど……。引くくらい決断が速かったわね……。私、こんな男子を車に乗せて大丈夫なのかしら……」
「そういうことは……心の中で思ってほしかった……。言えた義理じゃないけど……」
「あ、ごめんなさいね。私は、髪永友(かみなが とも)。あなたのお知り合いの友人よ」
彼女はそう名乗ってサングラスとマスクを外した。結構な美人さんだったが、そんなことよりも僕は他の感動に浸っていた。
「ぼ、僕に知り合いがいたなんて……」
「は?」
し、しまった! なんだか、とっても恥ずかしい実情を口にしてしまった。なんとか誤魔化したい!
「あ、いえ……。実は僕、記憶喪失で、一ヵ月以上前の記憶が無いんです」
「記憶喪失?」
「なので、その知り合いだという人のことも全然見当がつかないんですけど……それはどんな人なんでしょう?」
僕は、微かな期待感を持ちながら訪ねたが、帰ってきたのは残念な答えだった。
「あなたに会わせたい人っていうのはね……神様なの」
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