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「って、記憶を無くす前の僕は何かの宗教にでも入っていたのですか!?」
「違う違う。本当の神様なのよ。実は私も神様なんだけどね」
そう言って僕に、ウインクをしてみせる。
「危ない人だ!!」
「……そっちも、そういうことは口に出さない方がいいわよ」
「あ、いえ……えーと……」
それもそうだ。危ない人に危ない人だと言うのはなんだか危ない気がする。
「まあ、信じられないなら信じさせてあげる……」
と、髪永友と名乗った女性は、そう言うとアクセルを踏んだ。
「ちょ、ちょっと待ってください! こんな公道でそんなにスピード出したら……」
と、言ったところで周りの景色が変わっていた。というか、外の景色が見えなくなっていた。
「どう? ちょっと亜空間に入ってみたの」
「……亜空間というよりは……タイムスリップっぽくて、どっちかっていうと超未来っぽい感じです……。って、亜空間!?」
「ええ。あなたは何者かに監視されているのよ。しかも、神様クラスの存在にね。だから、誰にも知られないように術を施したこの車で、こうしてその相手に追跡されない空間を通って目的地へ向かっているってわけ」
「……そう……ですか……」
奇想天外な展開に、僕は言葉を失っていた。というか、病院で目覚めてからというもの誰かに何かを訊ねるたびに、あまり深く話したくないような事ばかり答えられるのだった……。
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