武人、誘拐される

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 腰も折れんばかりに深々と頭を下げている情けない女神様に、大魔王様は眉間に欠陥を浮き上がらせながら答えた。 『帰れと言われて、吾輩が素直に帰ると思うか? 吾輩は〝こっくりさん〟ではないぞ!』 「……そこをなんとかお願いします!」  さらに深々と頭を下げる情けない神様がそこにいた……。 『吾輩を異界から召喚するなど、どんな強力な魔力を持った奴かと思っていたら、貴様ごときが吾輩を呼び出してどうするつもりだったのだ?』 「えーと……。これは私のせいではなく、アホでバカでどうしようもないアリアっていう女神のせいで、けっして私のせいではないのです!」 『ならばそいつを連れて来い! そうでないと吾輩の怒りは収まらん!』 「あなた様のお怒りはごもっともだと思いますし、そうしたいのはやまやまなのですが……それがちょっと……」 『ふん! ならば、まず貴様を葬ってやるわ。そうすれば、そのなんとかという女神も吾輩の元に復讐に現れるだろう』 「いやいやいやいや……。っていうか、私、いつもそんな役どころなんで、実は1~2ヶ月前にも魔族に殺されちゃって、最近なんとか生き返ったばかりという状態で、もうそんなのこりごりなんです。ですから、それだけはご勘弁を! あなたの配下になって、世界の半分を統治してもいいですから!」  と、我が身可愛さにとんでもないことを言い出す神様に、大魔王が言う。 『お前のような弱い奴に世界の半分も与えたら、レベル10の勇者のパーティーにあっさり世界を取り戻されてしまうわ!!』 「ですよねー……。たはははは……」  って、髪永さん……なんで、そんなに弱いの? 一応、神様なのに!?
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