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『もういい。吾輩の炎で灰となるがいい!』
大魔王様はそう言って、口からとてつもない火炎を吐き出し、僕がもらうはずだったブラジャーを焼き尽くした。
「って、そこは、私が燃やされた描写をするところじゃないの!? この罰当たり!」
と、髪がチリヂリになって、アフロみたいになった黒焦げの髪永さんが僕に言った。
っていうか、肌がほとんど炭化しているという状況でツッコミを入れるとは、さすが神様と名乗るだけのことはある。そのことには、大魔王様も感心したようだった。
『ほう。吾輩の火炎攻撃をまともに食らって生きておるとは、少しはやるようだな』
「いえいえいえいえ。こんなの〝どんな攻撃を受けても残りヒットポイント1で耐える〟というマジックアイテム装備していただけなので、次の攻撃はどうかご容赦いただけないでしょうか……? 次はもうその効果が発生しないので……」
『そう言われたからといって吾輩が貴様を見逃すとでも?』
「そこをどうか。この哀れな子羊を、大魔王様の度量の大きさで見逃していただけないでしょうか。土下座でもなんでもしますからぁ!」
という掛け合いをしているところに、僕の背後から声がした。
「おぬしら、なにやっとるんじゃ?」
と、その声の主は……。
袖なしの白い着物のような衣装を身に纏い、長い黒髪をなびかせて……。
フツーに戸を開けて入ってきた。
「いや、そこはもっと劇的に登場しましょうよ! なに普通に入り口から入ってきてんの!?」
髪永さんは、瀕死状態とは思えない素早さで、その入ってきた女性に駆け寄り彼女を盾にするようにしながらそう言った。
「別にそれほど緊迫した状況でもないじゃろ」
「緊迫してるわ! 私の残りヒットポイント1って状況よ! これ以上どうやったら緊迫するっていうのよ!?」
それまでの低姿勢が嘘のように強気な髪永さんだった。
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