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「大本さん! 目が覚めたんですか? あなた、1ヶ月も意識が無かったんですよ。すぐに先生を呼びますね!」
再び目覚めると、今度はニヤケた男ではなく、わりと美人な看護師さんにそう言われた。
「あ、どーも……」
と、答える。
ふと、前に目覚めた時には気付かなかったが、鼻にはチューブが入っているし、点滴や色々なコードやらが体のあちこちに刺さっていたり貼り付けられたりしている状態なことに気付いた。
「自分の名前、分かりますか?」
看護師さんにそう尋ねられて、『そういえばさっき目覚めた時、イマトオとかいう変なおっさんに聞いたな……』と、その会話を思い出しながら答える。
「あ、えーと……。おおもと……たけひと……とかいったかな?」
「それじゃ、どうしてここに居るのかわかりますか?」
「確か、交通事故で死にかけたと……」
そんな感じで僕は、前に目覚めた時にイマトオに教えてもらった通りに答えたのだが。
「ご自宅の住所は言えますか?」
と尋ねられて、そこで答えに詰まってしまった。
そんな簡単な質問に答えられない自分に慌ててしまったのだが、よくよく考えたら僕は記憶喪失なのだと思い出す。
だったら質問に答えられなくても当然だと気付いて、そのことを相手に伝えようとした時。
いつの間にか看護師さんの後ろに立っていたイマトオが、住所らしきものを書いたスケッチブックを僕に見せた。
テレビ収録のカンペかよ! と、思いつつも、そこに書いてあった住所をつい素直に読み上げてしまう僕がいた。
「よかった、意識も記憶もはっきりしているようですね」
そう言われて、僕は慌てた。
「いや、意識ははっきりしているけど、記憶喪失らしくて……」
「なに言ってるんです、ちゃんと覚えてるじゃないですか」
と聞き入れてもらえなかった。
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