眠り姫の伝説

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 見りゃわかる。聞きたいのは、人が母親に頼まれた買い物に行っている間に、部屋に上がりこんでベッドを独占しているのはどういう了見なのかというところだ。 「休みに家にいるとなんか野暮用頼まれたりして、ゆっくり寝てられないじゃん?」  子持ちのオヤジのような事を言い始めた。  こいつが部屋に来るのは、近所での付き合いが始まった幼稚園当初から。兄弟が多い沙月の家よりも、遊ぶものが多くあったからだろう。  人んちに来て、本読んだりゲームだけして帰る奴、っていうのはどこにでもいると思うが、沙月もそのタイプであり、付き合いが長いこともあって、結構行き来が気安い。親も止めないし。一応高校生にもなっているので、そういうのは改めて行こうと提案しているのだが。 「来るなら連絡ぐらい寄こせって、いつも言ってるだろ」 「いや、LINEは送ろうとはしたよ? うん」  枕の横に放り出された沙月のスマホ。  ……コメント送ってる途中で寝たらしい。 「俺のベッドで寝るという発想を捨ててくれ」 「寝るのはあたしの自由!」 「その自由は俺の自由に干渉するんだよ」 「あ、オクルマも寝たいの? なら一緒に寝る?」  ふざけた調子で布団を広げてひらひらさせてくる。まだ小学生ぐらいの感覚なんだろうな、と思いながら俺は努めて冷たくさつきを見下ろした。     
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