眠り姫の伝説

5/9
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「ただ、おまじないにしては結構直球っていうかさ。気になるんだよね、手軽さがなくて。普通こういうのって、相手を呼び出す段階で自分の気持ちとかは書かなくない? 呼び出すまでは察されるぐらいで留めて、んで相手が来たらいざ告白って感じなるでしょ? これならもう直接告っちゃった方がはやいような」 「そういうのがむしろ儀式的でいいんじゃないか」 「眠ってるのにも何か意味ってあるのかな?」 「どうだろう。こういう話って広まる段階で、いろいろ変化するだろ。実際『眠り姫の伝説』に繋がる逸話があったとしても、結構歪んで伝わってるだろうしな」  対して興味もなさそうになのに、やけに突っ込むな、と思いつつ俺は適当に答えた。 「このおまじないは、先輩の先輩が考えて、実際に成功したって話だよ。今でもその人と続いてるって」 「先輩の先輩……」  俺たちは2年生だから、どれだけ歳が離れていたとしても最大4年前。  わりと最近だぞ、その伝説。 「結構有名な理系の大学に進学した人だって話だし、何か確信があったのかも」  別に理系で頭がよかろうと、その知識を正しく使うかは、本人の人格次第だと思うが。理系文系は頭の良し悪しは関係ないと思うし。呼び出しの文面の細かさが少し理系っぽい感じはするぐらいで。  とにかく、はなからたいそうな理由はある気がしていない俺は、適当なタイミングで立ち上がる。 「どこ行くの?」 「トイレ」 「うんこ?」 「そういうこと言うんじゃありません」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!