眠り姫の伝説

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 ◆  小用を数分で済ませて部屋の前に戻って来た。  頭の中にはまだ『眠り姫の伝説』が残っていたが、まだ沙月はこの話を続けるだろうか。  話題としては気になるものはないが、これにかこつけて彼女の恋愛観を聞いておくのはありだったかもしれない、と考えたりする。  まあ猫みたいに気まぐれな奴なので、既に家に帰って部屋にはいないかもしれない、と思いながら部屋の戸を開ける。  中にはまだ沙月がいた。 「……猫、か」  俺はもう一度、戸を閉める。  開ける。  中にはまだ布団にくるまっている沙月がいる。 「何してんの?」 「いや、さっきの話、ちょっとわかったかも」 「え、『眠り姫の伝説』の意味がわかったの?」 「うん、まあ。つってもそんな大したな話じゃなく、ただの推論なんだけど」 「聞かせて」  沙月が身体を起こして前に乗り出してきたので、俺は腰を落ち着けるべく、近くの椅子を引っ張って背もたれを前に腰かけた。 「あれだよ。シュレディンガー」 「シュレディンガーって、シュレディンガーの猫?」 「んーまあ、それ。日本人が好きなやつね」  毒が噴射される箱に入った猫の話。     
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