眠り姫の伝説

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「まあ、バカげた話だと思うよ。誰が見ても。俺は思うにその先輩、そこで寝ていた時点である意味では成功している、って気の利いた言い訳にでも使いたくて、その方法考えたんじゃないかな。告白自体は、あんまり成功するとは思っていなかったのかも」 「でも実際に、目を覚ましたら相手がそこにいて返事もオーケーだったから……」 「たまたま告白自体が成功しちゃったんで、引っ込みがつかなくなった、っていう」  話を終えた後、沙月はしばらく無言のままだったが、やがて起こしていた身体を投げ出すようにベッドに再び寝転がった。 「なーんだ」 「沙月?」  思ったよりつまらない話だったので機嫌が悪くなったのか、そのままぐったり横になって彼女は動かなくなる。  しかししばらくして、枕元に放り出していた自分のスマホをポチポチし始めた。 「今、13時55分だね」 「うん」  俺は部屋の時計で確認した。 「じゃあ14時丁度にお茶とお菓子を持ってきて」 「は?」  何がじゃあ、なのかまったくわからない。 「ここであたしが二度寝すれば、お茶とお菓子を持ってきている奥村がいる可能性によって、ある意味お菓子を食べることが出来る」  眠ったままだと食べることは出来ないと思うが。  しかし突っ込む間もない。  沙月の意志は固いらしく、布団をガバっと顔に被って完全に寝る態勢で、動きたくないと全身で伝えてくる。多分小腹が空いたのだろう。     
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