雪華

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「キミにはこれがみえる?」 それが彼女との出会いだった。 蒼く高い空から鈴の音のような雪が舞う、そんな早朝の公園。 首から提げたカメラを構え、 吐く息に僅かに眼鏡を曇らせながら小さく笑う。 「キミにはこれがみえる?」 「…これ?」 主語が大きい。 “これ”を指すものが一体何なのかと、カメラの向けられた方へと視線を移す。 視界に均等に植えられた木と手入れされた花壇、その端に砂場を捉えるしかない。 「これ、みえない?」 眉を下げ残念そうにもう一度問う。 その声音に『みえる』と答えそうになり、 一呼吸置いて逆に微笑んでみせた。 「君はみえてるの? それともファインダー越しでしかみえないもの?」 問いかけに下唇を柔らかく摘み、 目線を下へ、そして上、正面へ。 「…ファインダー越し」 小さく答える。 カメラはまだその方向へ向けられたまま。 だからもう一度そちらへ視線をやる。 「そっか… でも、そっとして 溶けて消えてしまうまで」 植えられた木と手入れされた花壇、その端に砂場。 彼女はカメラをこちらに向け、 シャッターを切る音が蒼く高い空へ響く。 「だから、残したいと思った」 鈴の音のように舞う雪。 シャランシャランとその一瞬を、 触れる大地に溶けてしまうまで踊る雪の華を。 これが彼女との出会いだった。
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