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駅前、人気の待ち合わせスポットには、人が満ち溢れていた。
どの人も考えることは同じ、と言うことだ。
買ったはいいけれど、時間がなくて読めていなかった本を読んでいると、目の前で恋人らしき男女がいちゃつき始める。
見せつけてくれるな、などと思っていると後ろから声が降ってくる。
「ごめんね、待った?」
「かなりな、もう少し遅かったら間に合わなかったぞ?」
駅の出口から階段で降りてくる彩香にそう返すと、彩香は立ち止まって不満げな視線をぶつけてきた。
「もう、こう言う時はカッコつけるべきなんだよ?」
「はいはい、今度からな」
不満を顔全体へと広げた彩香に階段を登り近づき、手を取る。
ちらり、と見上げた空には数十倍の大きさとなった月が見える。
「時間もあんま無くなってるぞ」
そう声を掛け、隣を見ると彩香の顔が見慣れたものに変わる。
「じゃあ、終末デートと洒落込みますよ」
彩香は、いつもの笑顔でそう言った。
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