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「しまった!昨日の節分で息子がリアルな鬼を見たいって言ったから旦那に鬼の特殊メイクを特注でしてもらったんだわ!いけない!どうしよう!旦那は私のことを貞淑で清楚で穏やかな女の子だと思ってるのに!」
しばし考えて、私は気絶している特殊メイクの旦那を再びベッドに戻す。
「しかし軽いわね。旦那、私より軽いんじゃないの?」
軽々と元いた場所に旦那を寝かせて、私も元いた場所に横になる。
心を落ち着かせて、特殊メイクをした旦那の鼻をつんつんと指で叩いた。
「朝だぞー。お寝坊さんめ」
旦那の頭がゆっくりと動く。
「あ。おはよう。なんか君にぼこぼこにされた記憶があるんだけど、覚えある?」
私はクスクスと笑ってみせる。
「変な夢を見たのね。私がそんなことすると思う?」
特殊メイクをした旦那の頭は横に振られる。
「そうだよね。おしとやかな君が鬼のような形相で僕をぼこぼこにするなんて夢でしかないよね?」
「そうね。夢よ」
あなた、素直ね。というかタフね。どこも痛くなさそうね。
ただ……、あなたをぼこぼこにするのちょっと気持ち良かったわ。
私、体重少ないほうなのに、私より軽いあなたにちょっと嫉妬覚えたの。
来年の節分も鬼の特殊メイクしてね。楽しみにしてるわ。
あはは、うふふ、と笑い声が聞こえる富豪の夫婦の寝室。どうやら新たな扉が開かれたようだ。
おしまい
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