吉川菜摘

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「あの、菜摘さん、俺状況がよく掴めないんですけど」 重いー、と藤はやっぱりいつものように笑っていた。 私は藤の唇に軽くキスをして言う。 「あんたの好きにしなよ」 「え?」 「小説家やめても藤は藤だし……私はどんな藤も好きだから」 「朝から恥ずかしいこと言うんだね」 藤はけらけら笑って、私を抱きしめてくれる。 「じゃあさ秋山藤、一世一代の大勝負させていただいてもよろしいですか?」 私の下で敬礼する。 「大勝負?」 「うん」 「何それ」 「1本だけ、もう1本だけ……書いてもいいかな」 もちろん、と私が笑うと、藤も恥ずかしそうに笑った。
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