加藤忠治 

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「こんにちはー」 緩いパーマのかかった長い髪、白くて細い体。 女みたいな男が玄関に立っていた。 仕事場は玄関から直通になっている。 玄関と真正面の席で仕事をしていた俺は、真っ先に男の存在に気付いた。 男はニコニコ笑っていた。 あまりに笑顔が似合っていたから、多分いつも笑っているんだろう。 「面の貼り紙を見たんですが」 たしかに「人手不足。正社員募集中」という貼り紙はある。 ただ、あれは絹恵が 「もう一人位人手が欲しいわね」 と勝手に貼ったものだ。 俺としてはどんなに忙しくても、相当気に入った奴以外は認めない。 秋山藤と名乗る男は俺がもっとも嫌いなタイプの男だった。
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