加藤忠治 

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「履歴書、出して」 一応、念のために面接をするかと思い、秋山を俺の向かいに座らせて言う。 「はい。お願いします」 秋山は俺に履歴書を渡して、大した男じゃないんですが、と笑った。 「よく笑うんだな」 履歴書にはそこそこ有名な大学の日本文学科に所属していたこと、小説家を目指してることなどが書いてあった。 やっぱり俺の嫌いなタイプ。 職業柄なのか、俺の予感はよく当たる。 「癖なんです。何だか辛くても嬉しくてもすぐ笑っちゃうんですよね」 秋山はこれまた恥ずかしそうに笑って、クシャクシャと長い髪の毛に手を入れた。 「長いな、髪の毛」 俺が咎める様に言うと、 「俺、顔幼いんですよ。すぐ子供扱いされちゃうんで、20歳過ぎてから伸ばしてるんです」 とけろっとした様子で笑う。 一通り質問を繰り返した後、採用か不採用かはあとで連絡すると告げ、 「今日は帰っていいよ」 と言うと、 「ありがとうございました」 とまた笑った。 何がそんなに面白いんだろうか。
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