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「不採用だな」
秋山が出て行くのを見届け、呟く。
「何でよー、いい子そうじゃん」
絹恵が珍しく意見してきた。
絹恵には人を見る目がある。
今働いてる2人のライターも、
「いい子そうね」
と絹恵が採用を決めた2人だった。
一方、俺が気に入り採用した奴は大概3カ月ほどで辞めていく。
「あいつ、俺の嫌いなタイプの人間だよ。見てりゃ分かっただろ」
口調が少し荒くなった。
「そうねぇ」
と絹恵は聞く耳を持たない。
「ここの大学出てるなんてなかなか優秀なんじゃない」
とまだ秋山を推してくる。
絹恵は普段夫を立てる良妻だと思うが、自分で決めたことに関してはとことん頑固な所もある。
「おい葛西、お前高卒だよな」
葛西がまとめていた資料をザッザと整えてからすっと顔をあげて
「ハイ、高卒っす」
とハッキリ答える。
葛西は俺が一番信頼してるライターだった。
葛西の書く文章は力強く、そしてシンプルだ。
「ほら見ろ。葛西みたいに大学出てない奴でも立派に働けるんだよ」
「葛西くんだって、あなたが大学出てない奴なんて働けるもんかって不採用にしようとしたんじゃない」
葛西がそうなんすかーと苦笑いする。
まったく嫌なことばかり覚えてる奴だ。
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