加藤忠治 

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次の日、秋山は白いYシャツに紺のネクタイ、濃紺のGパン姿で仕事場に来た。 「おはよーございますっ」 と、今までに見た中で一番の笑顔で挨拶してきた。 仕事場には俺と絹恵と八城という30歳になったばかりのライターがいて、みんなとりあえずポカンとしていた。 朝からこんなに爽やかな奴いなかったからだ。 「あらあら、良く来たね」 絹恵が出迎えると、失礼しまーす! と元気な声がする。 頭が痛くなってきた。 「こちらこそ、採用して頂いて本当に嬉しいです。よろしくお願いしますっ」 俺と八城は目を合わせて苦笑いする。 大変な奴を雇ってしまったみたいだ。 絹恵だけは嬉しそうに笑っている。 「そこ、座って良いから」 俺が八城の隣の席をさすと、ハイと秋山は素直に返事をする。 座るやいなや八城に、 「よろしくお願いしますね」 と笑いかける。 八城は、 「おっ……おう」 と先輩の威厳まどまったく無い声で答えた。 「仕事は色々あるけど、まぁお前がマトモに使えたら忙しくもなくなるから。頑張れよ」 俺も秋山につられて笑ってしまう。
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