加藤忠治 

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ある日、俺が仕事場の裏の空き地でタバコを吸っていると、八城が、お疲れ様です、とわざわざ話しかけにきた。 「忠治さん、藤、才能ありますよね」 八城が煙草を吸いながら、呆れたように言った。 自分に呆れているのか、藤に呆れているのか、俺にはわからなかった。 「才能?」 「文章の才能です」 「そうか?」 「あいつの文章は俺と忠治さんや葛西の様に淡白で力強いものじゃありません。むしろ踊るような、それこそ歌でも歌っているみたいな、そんな文章です」 八城は半分ほど残っている煙草を、灰皿にジリジリと押し付けた。 「ライター向いてないんすよね、藤は」 呟くように続ける。 「あいつ、小説家になりたいらしですよ」 「知ってるよ、堂々と宣言してるじゃねぇか」 「アホですよね。……なれますかね、小説家」 「……さぁ、運によるな」 「そうっすねぇ……」 八城は空を見上げながら、ため息交じりに言った。
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