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「どうするんですか?」
藤にもう今日は帰っていいからと告げ、 葛西と八城をデスクの前に呼んだ。
「これ忠治さんの欲しがってる原稿じゃないですよね?」
「これを認めてしまったら忠治さんの中で、今まで守ってきた物ってどうなるんすか?」
葛西と八城が矢継ぎ早に俺を責め立てる。
「お前ら、これ読んでどう思った?」
俺は問いに答えず言った。
「俺は忠治さんの言うライターの書く文じゃねぇと思いました」
「俺もっす」
八城が言い、葛西が頷く。
「ただ」
八城が続ける。
「ただ面白ぇな、とも思いました。この女子高生に会ってみてぇな、そんな気になりました」
葛西が悔しそうに頷いている。
「忠治さん、藤は俺達の所にいていいんですかね」
俺は黙って考えた。
八城も葛西も、藤のことが好きだから、藤の才能の為にクビにするべきではないか。
そう言っている。
藤が居なくなる。
今までいなかったのだから、昔の仕事場に戻るだけだ。
それだけのことなのに、どうも想像できない。
「藤の好きなようにさせましょう」
絹恵がコーヒーを3つ俺のデスクの上に置いて言った。
「あの子にあなた達が感じたことすべてを告げて、あの子の好きなようにさせましょう」
「そうだな」
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