吉川菜摘

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ビュンビュン。 西武新宿線はスピードを上げて、私の仕事場から逃げていく。 行けっ、もっと速く 。 外はもうすっかり夜で、もたれかかってたドアの窓に、自分の顔がハッキリと映る。 私ってこんな顔してたんだな。 肩までの髪に、お母さん譲りのくっきりした二重。 顎にニキビができてしまっている。 ビュンビュン。 「次は新所沢、新所沢ー」 自分の家が近づいてくると、やっぱり藤のことを考える。 私より細くて白い脚に、緩いパーマのかかった長い髪。 クシャッと笑うと、目がなくなる。 早く 逢いたいな。 私はギュッと目をつぶって、西武新宿線に身を任せる。
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