吉川菜摘

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駅に着いて降りようとすると、ドアの前に女子高生が2人で楽しそうにおしゃべりしていた。 私が降りようとしていることにも気づかず、夢中に何かを話しながら乗り込んでくる。 降りる方が先だぞっ、バーカッ。 私は心の中で毒づき、ホームに降りる。 深いため息をついて、 「ドアが閉まります」 と言い残して去っていく電車を見送った。 電車のいなくなった駅は寂しい。 閑散としてて人の声がボソボソと、でも鮮明に聞こえたりして。 この空気は、好きだ。 寂しくて、誰かに会いたくなる。 私は去っていった電車の方向を見ながら、 「青春しろよー」 と小さく声に出してエールを送って、改札に向かう。
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