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東山は先ほどからテーブルに着かず、壁に寄りかかっている。
コーヒーは飲んでいない。彼は気だるげな表情にわずかに微笑みを浮かべた。
「やっと...気づいてくれましたか?」
私は思わず立ち上がった。
「ひ、東山...!」
「そういえば昨夜は一緒にいなかったはずです!一体いつからこの家にいたんです...?!」
北河さんも動揺してカップを倒しそうになった。
「まさか、お前が部長を?...それになんでコーヒーを飲んでいないんだ...まさかこのやたら苦いコーヒーに毒を盛って、真実に気がついた俺たちの口を封じようと?」
うわあ!確かにこのコーヒー苦い!死んじゃう!
私たちは口を押さえた。
東山は後ろを向いて少し俯いた。
「皆さん...僕がそのときどうしていたと思いますか?」
東山はゆっくりと語り出した。
何だかとても...悲しそうな声だ。
「え...?」
「僕は皆さんがキャバクラ行ったり、街コン行ったり、ララランドごっこしているときにね、」
そして東山は振り返ってこう言った。
「1人で残業してたんすよ!」
えええ!!そ、そんな!まさか!!ハロウィンの日に!?あり得ない!私は本来なら自分も直帰する予定だったのを棚に上げて叫んだ。
「ええ、ええ。そうですよ。僕が残業してるとも知らずに楽しげな写真を何枚も送りつけてきて!ララランド動画まで!」
「昨夜の遅く、僕もやっと残業を終わらせて!部長のおうちに合流したら!みーんなとっくに酔いつぶれてたんですよ!」
出迎えてくれたのは、部長だけでした!
そう言って顔を覆って膝から崩れ落ちる東山。
「僕はね、皆さんに思い知らせてやりたかったんですよ!」
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