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それからのこと
事あるごとに、わたしの右手・左手は飛んだ。
妊娠の報告をした時。
子供が生まれてあいつにみせた時。
あいつが昇進した時。
子供が高校受験に合格した時。
あいつは避けることもあったけど、大体食らってくれた。
平手打ちの場所が、背中になったこともあるけれど。
そして子供も旅立ち、二人きりで過ごす日々が続き。
いよいよ終わりも見えて来た時。
あいつがふと呟いた。
「俺はおまえより長生きしないといけないな。」
「何言ってんのよ!」
背中をバシーン。
「だってさ。」
「お前に平手打ちくらっていいのは、俺だけだからな」
目を見つめ、微笑むあいつ。
ひさびさに、おもいっきり左ほほに。
平手打ちをした。
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