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現実の虚しさか、僕は夢をよく見る。それはとてもファンタジックだ。夢の中では僕は万能で生気に満ち溢れ、程よく筋肉がついて締まった身体をしていた。身体が現実離れしているだけでなく夢の世界では、思い通りに物事が進んでいく。気に入らないヤツは抹殺も同然だった。
雑踏の中。肩を寄せあって他人の目も憚らずキスをしたり、まるで閨房を露わにしているような男女が僕の前にいた。そんなに、二人きりの世界を他人に見せつけたいなら、いっそここで、理性を失ってしまえ。そう、僕が念じると、彼らは一糸まとわぬ裸となっていた。
「きゃー」
「ちょっと、どういうことだよ!」
「なんで、裸に!! ちょっと、見ないでよ」
女は見た感じ中年だっだが、締まった身体をしていて、腰元はハリがあり、くびれたウエストだった。胸は小ぶりだったがピン上向いた乳首が瑞々しかった。
僕は、一瞬にして観察し、彼らが途惑うのをみて心の中で、
「ざまあみろ」とつぶやいていた。女の身体に興味を持つこともなく、もちろん相手の男、中年と思われる、腹がたるんだ肉体には興味はおろか、嫌悪感さえ覚える。ぼくは、彼らが晒し者になったこと、それだけが満足だった。これは、どうせ夢にすぎないのだから。目が覚めたら、また貧相で、小心者すぎる僕に戻り思い通りに事は運ばない。
それが現実…。
ではなかった。
夢の中で存在していたはずの中年カップルが、裸で公衆の面前で、路上をいやらしい行為を見せつけながら歩いていたとして、公然わいせつ罪で逮捕された。
僕の目の前で起こったこと。これは現実だった。だけど、僕の身体は相変わらず貧相で、筋肉質じゃない。
どこまでが、夢? どこからが現実?
僕は、このまま生きていくのがろうか。
それとも…?
了
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