まわるまわる

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 ある朝目が覚めると、そこは海の底だった。 一瞬アセったけれど、私は魚だったので、スイスイと泳ぎ回った。  いろいろな魚がいた。ウツボがいた。サンマがいた。カニもいた。私は右に左に愛想を振りまきながら、気分良く泳ぎ続けた。  自分がどんな魚なのか…。それはよくわからない。海の底に鏡はなかったので。ただ、海藻の間を抜けたり、岩の隙間に潜り込むことができたので、あまり大きな種類ではなさそうだった。  ふと、水面からの光が閉ざされ、大きな影が近づいてきたかと思うと、ぱっくりと開いた口に飲み込まれ、私は食べられた。 * * * * * * * * *   ある夜目が覚めると、そこは木の上だった。 一瞬驚いたが、すぐにしっぽが枝に絡まったので、落ちずにすんだ。私は仲間のサルに導かれて、後をついていくと、何ともいえない好いにおいの実がなっている木にたどりついた。初めて食べるのに、どの実が熟しているのかはすぐにわかり、私は夢中で食べた。  突然、長老がキィキィと叫び始め、続いて群れ全体が騒ぎ出した。細い枝はわさわさと揺れ、私は掴まっているのがやっとで、声を出すことができなかった。  しばらくして、一匹の蛇が遠ざかっていくのが見えた。騒ぎの原因はアレだったのだろう。仲間の協力で、蛇を追い払うことができたのだ。  私は夜が明けるまで実を食べ続け、仲間と共にねぐらに帰った。一匹の年上のメス猿が、慣れた手つきで毛づくろいをしてくれた。私もお返しに、相手の頭や背中をつついた。小さな虫が隠れていたので、つまんで口に入れた。ちょっとしょっぱかった。  そうしてしばらく暮らすうちに、葉は枯れ、雪が降り始めた。寒さが身に染みた。長老は木から下り、寒さを防げる岩場に移ることを決断した。  私たちは身を寄せ合って、子どもを守りながら移動した。岩場に着くと、風を避ける場所を見つけ、枯れ草を集めて、また身を寄せ合った。  
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