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彼の名前を思い出すよりも先に、私がなぜ病院にいるのかという考えに至るよりも先に、核心を突かれてしまった。先ほどから下半身に違和感は感じていた。ためしに動かそうとするが、ピクリとも反応しない。一気に押し寄せてくる不安を払い除けたくて、私は掛け布団を文字通り払い除けた。
「・・・・・嘘でしょ」
不安は一瞬で絶望感に変わり、私を飲み込んでいった。見てはいけないものを見てしまった。私の膝は包帯で支配されており、そこから何本もの管がベッドの下へ延びていた。太腿からつま先までミイラ状態だった。これ以上絶望の波が高くなっては、もう二度と立ち直れないかもしれない。
「これ、治るんだよねえ?」
声を出して初めて、私は泣いているのだと気づいた。それからは、もうすがるような気持ちで泣きじゃくった。崩壊した涙腺から、止まることなく涙は噴き出た。このまま1リットルの涙を流して死ぬんじゃないかと思った。そんな私の醜態を、彼は隣でずっと黙って見ていてくれた。私が泣き止むまでずっと待っててくれたのに、彼の温かい眼差しを見て私はまた泣いた。
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