1 よそ者は白の軍服を着ていた

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 華麗な踊り。一糸乱れぬ足の動き。  踊り子たちの動きに合わせて華やかな色が舞う。鳴り響く陽気な音楽とともに踊りはやがて天の高みへと上るように一層激しく盛り上がっていく。  酒場は酒とたばこと労働を終えた男たちの汗のにおいで満ちていた。  いくつもの木製の丸テーブルを囲んで畑仕事の合間にやってきた男たちが酒を飲みかわし、舞台上の色とりどりの衣装を着た若い娘の踊り子達を楽しげに眺めている。  唐突に踊りが終わった。とたんにその空気を割るようにわっと男達の歓声があがった。立ち上がって手を叩き賞賛の声をあげる者もいれば、口笛を吹き舞台上の女たちを冷やかす者もいる。  踊り子たちは鳴り止まぬ歓声の中、頬を上気させたまま席で待つ自分の男のもとへとそれぞれ向かう。  男達の仕事の労をねぎらうために踊りを披露し、その後酒の相手をする。村のために頑張っている男のために女がするべきことだと、この酒場の女主人は踊り子の娘たちにいつも口うるさく教えている。 「なあ、リトはどこに行ったんだ?」  不意に一人の男が声をあげた。 「何よ。私じゃ嫌だって言うの?」  その男の隣で酌をしていた女がすねたように口を尖らせた。 「いや、そういうわけじゃなくてさ」  慌ててそう弁解し、男は気まずそうに言葉を続けた。 「なんというかさ、やっぱリトがいたほうが踊りに華があるというか……」 「リトなら休みだよ」  カウンターに気だるげに手をついてタバコを吸っていた酒場の女主人であるテレサが口を開いた。老いの見え始めたその横顔には若かりし頃はさぞ美しかったのであろう名残が見える。 「休み?風邪でも引いたのか?」 「まさか。ピンピンしてるさ」  テレサはしゃがれた声をあげて笑った。 「今日は先約があったんだとさ」 「先約って、何の?」  テレサはゆっくりとタバコの煙を吐き出した。テレサの結いあげた黒髪の上で紫色をした髪飾りの石がきらりと光る。 「子供たちと隠れんぼの約束だってさ」 ***
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