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「……よそ者」
男達を一目見てリトは眉をひそめた。
リトの住むゴーランの村の者は皆一様に肌の色が浅黒く、鴉のような黒髪に同じく黒い瞳が特徴だ。だが今目の前にいる男達の肌は生白く、髪は明るい赤髪だ。ゴーランの者ではないことは一目瞭然だ。
「誰だい?あんたたち」
ミミを背にかばいながらリトはきつい口調で尋ねた。
「金目の物をこっちによこしな」
リトの質問には答えずに、ひとりの男はそう言うと腰の刀をすらりと抜いた。鈍く光る刀を見たとたん、ミミが小さな悲鳴をあげてリトの腰にしがみついた。
「ほらほら、痛い思いをしたくなかったら金をよこせよ」
「金目の物なんて持ってないわよ」
男の脅しに動じずにそう答えながら、リトは至極冷静に男達の様子を窺っていた。
刀を持った総勢5人の男達。今、リトの目の前にいる体格の良い男がおそらくこの男達のリーダーだろう。この男は刀の持ち方からしてもそれなりに腕は立つだろう。だが、残りの4人はどうということはない。経験の浅い素人だ。
ーーいける。
リトは確信を持って心の中で呟いた。そしてリトにしがみついて震えているミミに彼女にだけ聞こえるように小声で言った。
「ミミ、私が合図したら振り返らずに村へ走るのよ」
「えっ?」
ミミが驚いて顔をあげた。
「いい?村へ走るの。そして助けを呼んできて頂戴」
「でも……」
ミミは刀を向ける男達とリトを交互に不安そうな目で見た。
「私は大丈夫」
リトはわざと明るく言った。
「ミミも、心配だと思うのなら走って助けを呼んできて。できるよね?」
「おい、お前たち何をこそこそとしゃべっているんだ」
リーダー格の男が刀を向けたまま苛立った声をあげた。
「ミミ」
リトは念を押すようにミミに呼びかけた。ミミはまだ不安そうだったがそれでも意を決したようにひとつ大きく頷いた。
「あんたたちにやるものなんて何もないわ」
リトは声を張り上げた。リトが堂々としていることが予想外だったらしく、男達の顔に驚きと戸惑いの色が浮かんだ。
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