14人が本棚に入れています
本棚に追加
リトは再び確信した。こんな迷いだらけの刀の相手なら、勝てる。
「お前、今の状況がわかっているのか!」
リーダー格の男が焦れて剣先をリトに近づけた。
「あんたこそ」
リトは口角をあげ、刀を向ける男たちに対して挑発的な笑みを浮かべた。
「そんな、なまくら刀で私を斬れるの?」
男の怒りが頂点に達した。
「この女!」
怒りで男の顔は沸騰したように赤くなった。
「やっちまえ!」
荒々しい掛け声にあわせて、5人の男達がリトめがけて刀をふりあげた。
「今よ!」
リトは声をあげるとミミの背を強く押した。とたんにミミははじきだされた鉄砲玉のごとく駆け出した。リトは走り出したミミとは反対に、向かってくる男達のほうへ走り出した。
まずは一人目。先頭の男の振り下ろす刀をぎりぎりで見極めて紙一重でよける。リトは自分の動きに絶対の自信があった。この中で一番動きの鈍い男に狙いを定める。向かってくる刀をひらりひらりと蝶の舞うかのごとくかわすとリトの手刀がすばやく男の手元に振り下ろされた。
「うわっ!」
男はリトに手首を叩かれた反動で刀を取り落とした。リトはすばやく刀を奪うと男達に向き直った。
男達はまさか刀を奪われるとは思ってもみなかったらしい。信じられないものを見るような目でリトを見ている。
呆然としている男たちにリトはまるで遊び相手を見つけた子供のように目を輝かせて刀ごしに不敵な笑みを浮かべた。
そしてリトは自ら男達の中に飛び込んだ。
踊りと戦うことは似ていると思う。まわりの動きを瞬時に判断して体を動かす。リトは相手の動きを読むことに長けていた。大勢の中でどう動けばより美しく華麗に見せることができるのか、リトは人から教えられなくてもわかっていた。剣術もそれと同じだ。相手の動きを読み、相手の隙を見て自分の刀を振る。リトはリーダー格の男の背後を取った。相手の首すじにぴたりと刀を押し付ける。とたんに男達は動きを止めた。
「殺されたくなければ、刀を捨てな」
リトは低い声で脅しをかけた。最初から分かっていた。この男がこの中で一番強い。そのリーダーさえ討ち取れば、必ずこの集団は士気をなくす。案の定他の男達は素直に刀を下ろした。恐ろしい化け物を見るかのような目でリトを見ている。
最初のコメントを投稿しよう!