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「助けようと間に入ろうとしたら、あなたが刀を構える男達に向かっていくのが見えましてね。驚きましたよ。あんなにも鮮やかに刀を奪い、並の男と対等に、いやそれ以上に渡り合う女性を初めて見ました」
男は改めて感心したようにリトを見た。
「ゴーランの女性は強いのですね」
その心底感心したような言い方がリトの癇に障った。
「何?田舎の女だからって馬鹿にしているの?」
リトの言葉に男はとんでもないとばかりに首を横に振った。
「そんな。心からすごいと思っているのですよ」
リトは男からまだ刀を下ろせなかった。この男、信用できない。
「あの、刀を」
「下ろさないわよ」
リトは男の言葉の先を読んでそう言うと、男をきつく睨み付けた。どうやら男はリトを納得させるのをあきらめたらしい。小さくため息をつくと思わぬ名前を口にした。
「わかりました。では、村長のヨーゼフさんを呼んでください」
「えっ?」
「ヨーゼフさんに話せばわかってもらえるはずですから」
リトは大いに戸惑った。どうしてこの男がゴーランの村長の名前を知っているのだろう。リトが尋ねようと口を開いたときだった。リトの耳に村の方角から人の声が聞こえてきた。
「おおい!リト!」
「大丈夫か~?」
きっとミミの呼んだ助けが来たのだろう。
リトは刀を下ろさずに目だけでそのほうを見た。村から大勢の男たちがそれぞれに武器を手に走ってくる。その人の集団の中に村長の姿も見える。
「リト!その男か!お前を襲ったのは!」
助けに来た村の男達が口々に警戒して刀や槍を男に向けた。
「いえ、私は」
大勢の男に武器を向けられ金髪の男はさすがに焦ったらしく、両手をあげたまま困惑した面持ちで男達に理由を説明しようとした。
そのとき、
「刀を下ろしなさい」
その場に響いた声にリトは驚いて村長を振りかえった。
最近少し腰が曲がってきた村長はしわだらけの顔で金髪の男を見上げると深々と頭を下げた。
「ようこそ、ゴーランの村へ」
金髪の男も現れた村長に安堵した表情を浮かべ、手を胸にやり優雅に一礼した。
「あなたがゴーランの村長、ヨーゼフさんですね。はじめまして。ユーリ・ランドルです」
村長と男のやり取りに周りにいた者は皆、あっけにとられた。リトも同様だった。
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