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空からは吹奏楽部の奏でる「威風堂々」が降り注ぐように響いている。
エドワード・エルガーが作曲した管弦楽のための行進曲集。私たちがよく耳にするのは、その第一番であり、第六番まで続く曲の一部にしか過ぎない。
原題の「PompandCricumstance」は、シェイクスピアの台詞からきていると、何かの本で読んだことがある。
まだ完璧には遠いだろう粗削りな調べに耳を傾けながら歩いていた時、不意に何かが弾かれるような音がした。それが無機質な物体同士がぶつかる音だと理解したのは、立ち止まり振り返った先に転がる銀色の鍵を見つけたからだ。
私は数歩後ろへと戻り、赤いプラスチックのタグが付けられたそれを拾う。
気づけば吹奏楽の音は鳴り止んでいた。
第二視聴覚室。
その文字に、私は漸く顔を上げた。
今私が歩いて来た職員室から続く道。第二校舎と呼ばれるその二、三階には、幾つかの専用教室がある。
例えば理科室や家庭科室、美術室に、さっきまで音を響かせていた音楽室も、その中に位置している。
第二視聴覚室もまたその内の一つ。二階の一番右端にある小さな教室だ。今の人が落としたのだろうか。
そう思ったけれど、既にその姿は見えない。
どうしよう。私は自分の掌を見ながら考えた。
だけどすぐに、後を追いかけることにした。
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