3.

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「だったら、俺と結婚すればいい」 「え?」 「その為に帰って来たって言ったら、羅々ちゃんはどっちを選ぶだろうね」 熱かった。身体中が熱を帯びて、お腹の奥が疼いて溢れ出す。吹奏楽部が奏でる「花のワルツ」に隠れて、私の全てを奪った男。私が全てを差し出した男。 「私は、司君を選びます」 だけどこの男とは、幸せになれない。 千尋先輩の胸元を押すと、その手はすぐに離れていった。 「じゃあ、来週の火曜日に」 「……失礼します」 私はその顔を見ることなく、資料室を後にした。 すぐそこに、夢に見た幸せな未来が待っている。 だから真っ直ぐに歩けばいいだけだ。 大好きな人の手を握ったまま、歩けばいいだけだ。 立ち止まって、振り向いたりしない。 吉岡千尋はもう、過去なのだから。 千尋先輩は、私のものにならない。 私がどれだけ望んでも。
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