光と音と熱と

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光と音と熱と

「私、目が悪いの。度のきつい眼鏡って嫌。目が小さく見えるもの。  知ってる? 目の悪い人の見えてる景色って、目の良い人とのそれとは異なるのよ。当然だけどね。  よく言うのはモザイクがかかったような景色だとかピンボケのある風景だとかね。でもそれだけじゃないの。度数のきつい眼鏡をかけていると、物質の界面に赤と青の境界線が見えることがあるわ。日差しの強い太陽光の下でよく起きる。今は太陽の光が射していないから輪郭は見えないけれど。  これは赤色と青色の波長が異なるからでね。波長が異なる光線は屈折率に差ができて光が分散するのよ。プリズムで白色光が様々な色に分散させて、虹色を作っているのを見たことはない? 簡単に言うなら、ああいうことが私の眼鏡でも起こっているの。分散した赤の750nmと青の450nmが網膜にあるロドプシンを構造変化させて視神経を刺激し、脳に視覚を生み出すってワケ。ねえ、白い景色って綺麗だけど体温を感じさせないって思わない?
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