M

6/7
前へ
/7ページ
次へ
朝も混んでいたことから察しはついていたが、電車はかなり混んでいた。お互いの肩にもたれながら寝ているカップル、遊び疲れて親の背中で寝ている子ども。杖をついているお婆さんに席を譲る金髪の若者。暖かさを感じながらも、対照的に俺の中には孤独という冷たさが残った。「次は~.....ょう、欅町~。お出口は右側です。立島線をご利用のお客様はお乗り換えです。」欅町はこの県のほぼ中心ということと、東京へと繋がる立島線との接続もあって、ほとんどの人が降りる。乗ってくる人もそこまで多くはない。2駅先の橘町まで乗っている乗客は多くないので、欅町から座れなかったことは1度もない。あれだけ賑わっていた車内がまるで別空間のように静かになる。どうせ2駅なのだから、と空いているにも関わらず、敢えてドア横のスペースに立っていることにした。欅町から橘町までは、ほとんどは山を掘ったトンネルを通るので景色が代わり映えせず、退屈なのであやうく寝過ごしそうになったことが何度かある。また、欅町を過ぎてからは一気に山あいの田舎になるので、時代を遡行しているような感覚を抱くことがある。特に橘町などは駅前にコンビニすらないほどである。まあ、おかげで家賃が安くて助かっているのだが。「次は~橘町~、橘町~です。お出口は右側です。橘町の次は終点、大淵に止まります。」そんなアナウンスが流れ、9分という長くも短くもない時間で橘町に着いた。改札を出ると、ロータリーには既にバスが待っていた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加