特別な人との休日

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特別な人との休日

 私は今、フレンチレストランでディナーを食べている。そして目の前には美女がいる。私とは年の差が五つあるので彼女は二十一歳ということになる。今日は休日ということもあり、予約を取るのに苦労したのだが、彼女のためならそれぐらいどうということはない。彼女の笑顔にはそんな苦労をしてもお釣りが出るほど疲労回復、精神安定の効能がある。 「ところで相談ってなんだい?」    世間話をほどよくし、場が整ったところで私はそう切り出した。そもそも彼女から「相談があるから今夜会えない?」と連絡を受けたのでこうして一緒に食事をしているのだった。彼女はすまなそうな顔をし、心持ち伏し目になる。 「そう、そのことなんだけど……、最近どうも体調が良くなくってさ、たぶん風邪だとは思うんだけど全然治る気配もなくて……夜とか寝つけなくて睡眠薬を飲むこともあるの、このままだと大学留年しちゃうかも……」  彼女はそういうが、外見的にはいたって健康そうである。 「だけど、フレンチは食べられると仰るのだね」 「幸いなことに食欲はあるんだよ」  至極真面目な様相でいった。  彼女は大学三年で、この町にある国立大学に寮から通っている。もちろん私の仕事についても知っている。 「彼氏にはいったのか?」  私は彼女の兄だ。両親が他界しているので私が学費を出している。 「いったよ、心配してくれた」 「そうか」  私はあまり妹の彼氏をよく思っていない。私と違って背も高く、見た目は確かに整っているのだが、どこか上辺だけ取り繕ったような人間にみえてならないのだった。 「まあ、無理はするな、ヤバそうだったらいつでも電話していいから」  根は真面目な妹のことだから嘘をついて一年間遊ぼうなどとは考えていないことは明らかだった。いつも私の懐事情を気にしてくれた。大学受験の時も私立は全く受けずに国立一本で挑んだのだった。  けれど私は妹にはそんなこと気にせずに甘えて欲しかった。両親が早くに死んでしまったので、私は彼女の親がわりなのだ。だからたまに会うときはこうして少し高い食事をしたりする。 「うん、ありがとう」  この笑顔のためならなんだってできる。そう思った。
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