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やらなくてはならないことを終えた私は警察に電話をした、直ぐに向かうといっていた。電話を終えて、数分間ベッドに腰かけていると玄関が開いた。大声で妹の名前を叫んでいた。あの彼氏だ。
彼氏は吊られた妹を見るとその場にくずおれた。
「お兄さん……まさか……」
「ああ、もう死んでる」
私は憎しみで声が震えないように気を付けながらこたえた。
「ケータイ。ありますか……? 彼女のケータイなんですけど……もしかしたら僕に何か書き残したりしているかもしれません」
やはり、こいつの目的は妹のスマートフォンに残る証拠の隠滅だった。警察が来る前に消そうとして話題を早く振りすぎている。明らかに不自然だ。けれど……。
「ああ、あるよ……ベッドの上だ。私は妹のスマホの暗証番号を知らないから開けられなかったんだが、君ならできるか?」
彼は、あからさまに安堵の表情を見せたが直後には神妙な面持ちになった。
「できます」
「なら頼もうかな」
そういって私は妹のスマートフォンを渡した。彼は礼をいうと、私に画面を見せないようにし、ずいぶんと長い間待った後で、ロック解けました、といった。その間に、あのやり取りを削除して、もしかしたら妹から私への最後のメッセージも消したかもしれない。けれどそれでいい。
「見ますか?」
彼がそういって妹のスマートフォンを寄越した。
「ありがとう」
お前を、裁くのは警察でもなければ裁判官でも検察でもない。お前は私がどんな手を使ってでも裁いてやる……。私はそう強く決意した。
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