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「そういえば何でそいつは騎士団を辞めたんだ? だって強かったんだろう?」
素朴な疑問をオセがカエデにぶつける。
「王国騎士団の規則を破ったという理由で、職を追われたと聞いています」
カエデの心に、元々はあなた達が原因だと不満が募る。
「ふぅん。クビにされた割には騎士団と一緒に戦っていたのか、変なの。俺だったらそんな国なんか放置だけどね」
オセが船漕ぎをしながら思ったことを口にする。
―――何も知らないくせに。
カエデの中で兄を馬鹿にされた思いが大きくなる。どれだけ兄が周囲の嘲笑をものともせず、人々のために身を粉にし、時には命をかけて来たのか。貧しくとも心の中では兄を尊敬し、また自慢の兄だったことが彼女を感情的にさせる。
「あなた達さえ来なければ………」
カエデは小さく声に漏らす。そして今までの恐怖や兄への思いがあふれ出し、彼女の目に涙をあふれさせた。
「負けるものか………絶対に」
一度だけカエデは腕で濡れた目を擦りつけた。
-第五部に続く-
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