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「ボーマさん。食事以外の時に度々この箱を開けてつまみ食いをしていましたね?」
「ま、まぁ。それなりに」
カエデの尋問に、ボーマはそれとなく認める。
「兄貴はそれを見ていただけでなく、分けてもらっていたよね?」
「ま、まぁ。それなりに」
タイサも同様に認めた。
カエデはもう一度大きく溜め息を吐くと茶色い前髪をたくし上げる。
「2人のご飯はありませんので」
「ちょちょちょちょーい!」「本気かぁ!」
カエデの判決に2人はあんまりだと立ち上がるが、痺れた足では動かず、そのまま気持ちよく後ろに転がった。
「「ぎゃぁぁぁ」」
足に力が入らない。タイサとボーマは足を擦りながら地面を這う。
「兄貴、ちゃんと私達の状況分かってる?」
王国騎士団を、王都を追放され、さらに多額の借金も残っている。自分の意思とはいえ、同じ騎士団に所属していたエコーとボーマは騎士を辞め、タイサについてきてくれている。
冒険者としての新たな出発。
だが、話はそれだけでは終わらなかった。
魔王軍と名乗る蛮族達の出現。今まで本能のままに行動していた者達が戦術を使い、群れをなしている。さらにはそれを率いる77柱と呼ばれる一際強力な魔物の存在。
タイサ達はその事実を王国騎士団に伝えたが、一笑に伏され、相手にされなかった。
「デルさんを助けに行くんでしょう?」
食べ物がないのに、どうやって助けに行くのかとカエデが腰に手を当てる。
既に王国騎士団は蛮族討伐のために東に出発している。魔王軍の存在を知らないまま戦えば、苦戦は免れない。それどころか壊滅の可能性すらある。
タイサ達は、先発した親友のデルを助けに行くべく、また事実を伝えるために東へと向かっていた。
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