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「う、動かん! この細い腕のどこにそんな力があるのか!」
シーダインは腕に血管を走らせながら指の間に挟まれた剣を左右に捻るが、剣は一点を中心に微動だにしない。
「当然だ。お前達が二百年の間を安穏と暮らしてきたようだが、我らは常に戦いの中に身を置き己を磨いてきたのだ」
シドリーはある男と交わした言葉を思い出す。
「我らの正義の前では、人間の方が蛮族と知るがいい!」
シドリーの指に力が入り、シーダインの剣に亀裂が入る。
「馬鹿なぁっ!」
指で挟んでいる剣の部分が砕かれた。シドリーは前に姿勢を崩したシーダインの体を支えるように鎧に左手を当てる。
「八頸」
瞬間。シーダインの鎧、その背中の部分が粉々になって吹き飛んだ。
「魔王様の生み出した魔技が1つ。私の魔力と共に存分に味わってくれ」
自身の魔力を強力な振動波として相手に伝え、内部を破壊する。シドリーの静かな一撃は、シーダインの体内を貫き、一方的に破壊させた。
「無念………」
シーダインの口から大量の血液が噴き出されると、彼は膝をつき、胸から顔の順で地面に倒れる。
「…………成程、言うだけの強さはある」
シドリーはいつの間にか折れていた自分の右手首に気付き、倒れているシーダインの背中に視線を落とした。
シドリーが左手で技を放つ瞬間、シーダインは剣を手放し、シドリーの右腕に両手の拳で挟みこむように最後の一撃を放っていた。
シドリーは左手で右手首を掴むと痛みからやや眉を動かしたが、掴んでいる部分が淡い光に包まれると眉の位置も次第に戻り、光が収束すると同時に彼女の右手首は元通りになっていた。
「もっとも、回復魔法が使える私にはさほどのことではないが………それでも私の体を傷つけたのだ、誇っていいぞ」
右手を何度も握りながらシドリーは踵を返す。
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