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ボーマは野豚のやや右側を走り、腰の剣を抜く。タイサはそのまま中央を走り、ボーマが誘導させる道を塞ぐ。
「隊長、そっちに行きましたよ!」
予定通り野豚がボーマに誘われ、タイサの方へと向かってくる。
「おう! 悪く思うなよ、子豚ちゃん!」
タイサは迫る野豚目掛けて剣を降り下ろす。
だが野豚は見た目に反して横に飛び、剣をかわす。
「「外したぁぁぁ!」」
タイサとボーマの目と口が大きくなった。
「隊長、外すにも程がありますよ!」「やかましぃ! 豚に言え、豚に!」
野豚がタイサの横を通りすぎる。
だがそのまま逃げると思いきや、野豚は大きく回り込み、頭の角をまっすぐ向けながら再びタイサに向かってきた。
「ほほぉ、意気込みや良し。だが相手が子豚ではな」
タイサは剣を地面に刺すと両手を前にして飛び込んできた野豚の首を捕まえる。
長い角はタイサの胸に当たっていたが、革の胸当てが僅かに削れただけに留まった。
タイサはそのまま野豚の首を絞め続ける。初めは手足をばたつかせていたものの、1分もしないうちに静かになった。
「隊長、縛り終わりやした」
ボーマが野豚の手足を縛り終え、野豚の頭を押さえたままのタイサの前で立ち上がる。
「とりあえず、これであいつらも文句ないだろう」
「そうですね」
適当に落ちていた太く長い木に野豚を縛り上げ、2人で担ぐ。
「よし、親豚が出て来ないようにさっさと退散するぞ」
「隊長、そういう言葉を吐くと、大抵は出てくるので言わないでくれますか?」
タイサとボーマは左右の足を揃えながら歩き始める。
そこへ背後から茂みが音を立てた。
「ボーマ………」
「………言わないでください、隊長」
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