第三章

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「ま、待てっ」「いや、待つのはお前達だ」  バルバトスを追いかけようとした数人の騎士の動きを止めるように、アモンが一喝する。彼は両手の爪を動かしながら炎を払い、残った騎士達の視線を自分に向けさせた。 「この期に及んで逃げる奴らの壁になるとはいい根性だ。その精神だけは褒めてやるぜ」  だが、とアモンが左右の鋭い爪を腰の横で広げる。 「悪いがお前たちは皆殺しだ。せいぜい悪あがきをして俺を楽しませてくれよ」 「ああ、楽しませてやろう」  声はアモンの背後から聞こえてきた。  アモンが振り返ると、こげ茶の髪をした男が草原から飛び上がっていた。男は騎士とはいえないほどに軽装備で、手や足、腰など様々な部分にベルトを巻き、短剣を刺し込んでいる。 「何とか間に合った」 「こいつ、いつの間にっ!?」  アモンは男が両手で放った短剣を右爪で弾く。さらに空中で抜いた男の剣を両手の爪で何度も払った。  アモンの前に跳び上がった男は、全ての攻撃を弾かれながらも頭上を通過し、武器を構えている騎士達の前に降り立った。 「成程、お前も猫メイド達と同じ77柱とかいう類か」 「………ほぉ、俺達を知っているのか」  騎士か、それとも冒険者か。アモンは首を鳴らして目の前に立つ軽装備の男に名前を名乗らせた。 「銀龍騎士団………団長のデル」デルはそう名乗ると、右手に持つ片手剣を一回転させて構えをとる。  相手の名前を聞いたアモンは何かを思い出すように一瞬空を見上げるや、すぐに視線を戻して大きな口で牙を見せつけるように笑った。 「もしかして、お前か? シドリーの妹を殺ったとかいう黒銀の騎士というのは」  相手の問いにデルは口を閉じる。だが、沈黙を肯定と捉えたアモンは『面白い』と何度もつぶやきながら両手の爪をぶつけ合った。 「面白い!」  アモンが体を低くして地面を一度蹴る。その瞬間、デルの懐には白と藍色の毛を持つ獣が飛び込んでいた。
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