第四章

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「デル殿の話をもう一度整理する」  ザルーネが敵の布陣図と周囲の地図を半分重ねる。そして魔王軍と称する蛮族の群れの存在、奴らが組織的に戦い戦術を用いてくること、その中でも77柱と呼ばれる強力な魔物がいること、逆に王国騎士団がゲンテの街を奪還したことなど、1つ1つをザルーネが思い出すように言葉にし、不足している部分をデルがもう一度説明し直した。 「何も問題ない。当初の予定通りに蛮族共を根絶やしにすればいい」  不意を突かれたとはいえ、まだまだ王国騎士団の人数の方が圧倒しているとベルフォールが熱弁をふるう。  現在の王国騎士団の主力は騎士総長で団長でもあるシーダインが行方不明。各騎士団は残存八百名ずつの3個騎士団計二千四百名、さらに後方で待機している騎士団『翼』を合流させればさらに千人の騎士が増える計算になる。 「布陣図と先程の戦いの大きさを比べて見る限り、敵の数は多く見積もっても千五百程度。仮に騎士団長級の魔物が10匹いたとしても、圧倒的な数の前には意味を成さない。同等と考えるのは甚だ不愉快だが、人間と同じように戦術を駆使したとしても、戦争は数だ。白凰騎士団団長の代理として、ここは一気に反撃に出るべきです」  ベルフォールは地図の上で指を強く、何度も叩きながら全面的な攻撃を主張した。感情的な説明であったが、説明そのものの筋は通っている。デル達3人の団長は互いに腕を組み、顔に手を当てて考えた。 「すぐ後方の、ブレイダスの街の状況は?」  デルがヴァルトとザルーネに尋ねる。2人は互いに顔を合わせると、ザルーネが布陣図をずらして質問に答え始めた。 「話にあったように、騎士団『翼』が街で待機している。蛮族の奇襲により、本陣を下げたことまでは彼らに伝えてあるが………」 「………住民の避難は?」  中途半端な対応、短く言い終えるザルーネの反応から、半ば答えが分かっている質問をデルは切り出す。
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